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知的な障害があったり、身体の障害があったり、そんなみんなと一緒に過ごし、暮らしてきました。その我が家を建て替えることになって、いろいろ調べてみたら・・・!
「介護しやすい家」や、「支援のしやすい家」、そして「パリアフリーの家」ばかり。一緒に過ごしたり、一緒に暮らしたり、つまりは一緒に風呂に入って、一緒にご飯を食べて、一緒に眠って・・・、という家は、まるで想定されていないのです。
それなら、そんな家を建ててやれ、ということで我が家の建替えが始まりました。これは、その様子を同時進行でお見せするブログです。

家のコンセプトは、「介護でも支援でもなく、僕たち一緒に暮らそうの家」です。それはつまりありふれて、普通の、街にとけ込んだ一軒家。

障害を持つ人の暮らしを考えたときに、どうして普通の家は想定されていないんだろう。どうして普通の家族や同棲や「一緒に暮らそう」は想定されていないんだろう。
そんなことを考えながら、更新していきます。
どうぞお付き合いください。

2009年03月05日

シナ合板という選択(1)

設計の段階で、大きく頭を悩ませた問題の一つが、壁の表面です。
壁紙を貼るか、他の仕上げにするか。・・・
考えるポイントはいろいろです。

・発作で倒れた人が頭を打ったような時に、少しでも衝撃が少ない壁が良い。
・何かの拍子に壁を叩いたり、蹴ったりする人がいる。その時に壁が破損しないように。
・しかし、壁が破れなければ、叩いた手や足を怪我してしまうことはないだろうか。
・壁紙の場合、剥がしてしまう人がいる。
・剥がした壁紙を口に入れてしまう人がいるので、万が一そうしても危険のない素材にしたい。
・その他、あれこれ。

設計を担当してくれた櫻井さんに説明していると、頭の中では、「でもこれを実現するとこっちが駄目じゃん・・・」と、もう一人の自分が自分にツッコミを入れている始末。
バリアフリーなら制度的に選択の幅が狭まるのだろうけれど、そこは一人ひとりの顔を思い浮かべながらの設計を覚悟した家です。A君に合わせると、Bさんに危険、みたいな「矛盾の家」づくりの様相でした。

さて、どうしたもんだろう。

幸いだったのは、設計の何度かを我が家で行ったことです。おかげで、初期の設計段階から、櫻井設計士さんは「一緒に暮らそうの家」で暮らすことになる裕子さんと会うことができていました。ですから裕子さんに合わせて、いろいろなアイデァを出してくれました。
それと同時に、みんなと過ごしている中で出来た壁の穴や、剥がれた壁紙なども、一つひとつ目にして、壁のあり方を一緒に悩んでくれたのです。
その中で、一つの疑問が出てきました。「どの壁も同じように叩いたり、蹴られたりするのだろうか?」という疑問です。
そう思って考えてみると、すべての人や場合に共通ではないのですが、「木」だとわかるものについては、あまり叩いたり、蹴られたりはしていない、ということです。もちろんこれは、すべての場に当てはまるものではないでしょう。あくまでも、僕らの家の場合は、ということです。
今まで何軒か、この仕事のために家を移ってきました。その頃の記憶を思い出してみても、壁紙の貼ってある壁はよく穴が開いていましたが、「木」だとわかる壁については、薄いものでもあまり穴が開いていなかったように思えました。
そこで出てきたアイデァの一つが、木目調の壁紙を貼るという方法です。しかし、このアイデァは、すぐにボツになりました。
次の写真を見てください。これは、蹴って穴があいた家具です。
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この素材は「木」なのですが、表面は木目調のシールのようなもので加工されていました。
つまり、こういうことです。少しばかり大胆に、ざっくりとした仮設をたてていくと、A君は「木」だとわかるものは叩かない。でも木目調の壁は叩く、ということになります。このことから、「木目調」が「木目」ではないことを、A君はしっかりと(おそらく僕などよりもずっと)分かっていると考えられます。
「木目調」の「調」、つまりフェイクが成り立つ根拠はどこにあるのか?
モノマネ芸人を考えてみましょう。コロッケという芸人が、美川憲一のモノマネをしている時、僕らがそれを見て似ていると思うのは、コロッケの側の技術によるところが大です。しかし、同時に、僕らの方がそれを美川憲一だと見るように心を動かしている部分があるはずです。コロッケと僕ら観客の間には、「こうやって口元を歪めたら美川憲一」とか「この手の動きをしたら五木ひろし」とかという、共通の記号が存在していると思うのです。
そして「木目」です。「木目調」のシールを開発する人と僕らの間には、暗黙に「この色で、年輪っぽくなっていれば木目」というような約束の記号が共有されているのでしょう。作り手は「木目に見せよう」とし、僕らはそれを「木目に見ようとする」。その両者の努力で「木目調」は成立していると考えられます。
ところがA君との間には、その約束が共有されているとは限りません。それが共有されていなければ、「木目調」を「木目」と感ずることはなく、さらにいうなら「木目調」という認識もなく、ただのシールとしか感じないかもしれません。
このことから櫻井さんが出したアイデァが、A君たちがたくさん触れる箇所の壁は、壁紙で考えるのではなく、シナ合板を貼ってしまおうという作戦でした。

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これがシナ合板です。
子供の頃、版画で使った人が多いのではないでしょうか? 終業式が終わった下校途中で、男の子たちが空手ゴッコをしながら割った、あの合板です。
子供の力で割れる程度なので、柔らかいです。でも壁の上に貼るわけなので、思いっきり叩くと、手を怪我する可能性はあるでしょう。しかし、A君たちが少しでも叩くことや蹴ることを躊躇してくれれば成功です。
はたして、これが思惑通りの効果をもたらしてくれるかどうか、それは実際にみんなが来てくれるようになるまでわかりません。

デメリットとしては、燃えにくさを考えて作られた家なのに、その内壁に「木」を貼るという矛盾があります。でも、作られた家の耐火性能をそのまま維持するためには、一切の荷物を置かない生活をするしかありません。家具を入れたり、本を買ったりした段階で、つまり生活することによって耐火性能は落ちていくと考えられます。ですから、シナ合板という素材も、そんな生活の一部と考えることにしました。
また、合板同士の継ぎ目が目立つと、人によってはそこに爪を入れて剥がそうとする危険も想定されます。下手をすると爪が剥がれてしまうかも・・・。
これについては、櫻井さんからバトンタッチして工事着工後に現場を担当してくれる高橋設計士さんに引き継いでもらうことにしました。

「継ぎ目が目立たないように」

さて数日前から、シナ合板が貼られはじめました。
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ところが、これが一筋縄ではいかず・・・。続きは、後日!

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