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知的な障害があったり、身体の障害があったり、そんなみんなと一緒に過ごし、暮らしてきました。その我が家を建て替えることになって、いろいろ調べてみたら・・・!
「介護しやすい家」や、「支援のしやすい家」、そして「パリアフリーの家」ばかり。一緒に過ごしたり、一緒に暮らしたり、つまりは一緒に風呂に入って、一緒にご飯を食べて、一緒に眠って・・・、という家は、まるで想定されていないのです。
それなら、そんな家を建ててやれ、ということで我が家の建替えが始まりました。これは、その様子を同時進行でお見せするブログです。

家のコンセプトは、「介護でも支援でもなく、僕たち一緒に暮らそうの家」です。それはつまりありふれて、普通の、街にとけ込んだ一軒家。

障害を持つ人の暮らしを考えたときに、どうして普通の家は想定されていないんだろう。どうして普通の家族や同棲や「一緒に暮らそう」は想定されていないんだろう。
そんなことを考えながら、更新していきます。
どうぞお付き合いください。

2009年04月01日

建築にとってのバリアフリー

2回ほど、講演を聴きにいった話が続く予定です。
最初は「UDCK環境フォーラム 環境に貢献する住宅建築を考える」。
2009年3月25日に柏の葉アーバンデザインセンターで行われました。

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我が家は見学会の行われた日だったのですが、気になる建築家さん達が話をするというのでちょっと無理して参加しました。
特に興味があったのは「環境貢献型住宅の提案」ということで三人の建築家が研究発表をしたところ。しかし無理して参加した分、いいところで僕の携帯電話に次々電話が・・・。
古里正さんの発表は丸ごと聞くことができず、佐藤和裕さんの発表は途中からしか聞けませんでした。
お二人とも、建築だけではなく、もっと広い柏の街づくりという視点でも注目すべき人です。お二人のホームページ、ブログは下記の通りですので、どうぞ見てみてください。
『古里正さん』
http://www.frst.co.jp/
『佐藤和裕さん』
http://sunnyside-farm.seesaa.net/
佐藤さんは下記でこのフォーラムの記事も書いています。
http://sunnyside-farm.seesaa.net/article/116335247.html

そんなわけで、研究発表を丸々聴くことができたのは、丹羽修さんの発表だけでした。
丹羽さんの設計については、以前このブログでも「美味しそうな家」というタイトルで書いたことがあります。
http://issyoni-kurasou.seesaa.net/article/108991189.html
丹羽さん発表は、この記事で書いた家についての内容だったので、僕にはとしても身近な感じがしました。

さて、このフォーラムは住宅において環境共生を目指す手法の一つとして「柏版CASBEE案」を考える狙いがあったようです。
CASBEEとは「建築物総合環境性能評価システム」とのこと。建物の環境性能を評価するためのツールだそうです。内容としては省エネやリサイクル性能のような環境負荷の低減から快適性、景観などの環境品質の向上までを総合的に評価するようです。国土交通省が主導して開発が進められているものなのですが、これの柏版を考えるフォーラムが行われたわけです。
三人の研究発表に先立ち、「柏版CASBEE案」の説明を東京大学大学院准教授の清家剛さんが講演しました。
その中で印象に残ったのが、この評価システムは「より良いQ(環境品質・性能)の建築物を、より少ないL(環境負荷)で実現するための評価システム」とのことでした。
つまり、環境にいいからといってそればかりを追求し、そのために暮らしにくい家になっては元も子もない、というわけです。
ところが・・・。

三人の建築家の研究発表は、それぞれがすでに設計し、あるいは実際に完成した建築物について、まずは「柏版CASBEE案」に基づいた評価を明らかにすることからはじまりました。そして今度はその家を「柏版CASBEE案」が示すベクトルにしたがって新たに作り替える図面を作り、その評価を比較するというものです。
ちゃんと話を聴くことができた丹羽さんの研究発表の感想を言うと、正直言って「柏版CASBEE案」に基づいて作り替えられた図面よりも、基づかずに建てられている家の方が僕は素敵だな、ということです。
写真は実際に建てられた家の中で、特に僕が気に入っている部分です。以前「美味しそうな家」で使った写真ですが。
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この部分は二階と一階を結ぶ通風口です。僕は裕子さんたちと暮らしているので、別々の階にいても彼女達の気配が伝わってくるこの通風口の存在はとっても素敵に思うのです。
ところが丹羽さんの説明では、「柏版CASBEE案」のベクトルで考えると、この通風口は段差が生じるために、バリアフリーという環境面でポイントが下がるとのことです。丹羽さんは作り替えの図面でも、それを承知で通風口を残したので、やはりバリアフリー面での評価は低いものでした。

ここで、アレレ? と思うのは、「柏版CASBEE案」は暮らしのクオリティを下げないはずではなかったのか、という疑問です。
二階の床をフラットにすれば、たしかにバリアフリーなのでしょう。しかし、言ってみるなら、しょせんバリアフリー止まりです。もっと大切な、本当の意味での安全に繋がり、なおかつ人と人とがお互いを感じながら暮らしていく住まいには、とうてい追いつかないのだろうと思います。
僕は今回自分の家を「一緒に暮らそうの家」として、バリアフリーにはとらわれないベクトルで考えてきました。その視点からすると、「柏版CASBEE案」にはちょっと不安を感じます。

もっと掘り下げて問題点を明らかにしていくと、「柏版CASBEE案」は独自の評価基準を持っていないということに突き当たります。
「柏版CASBEE案」は評価システムですから、一つの目的のために、それに最適な評価基準を持つべきでしょう。しかし現在のところは、既存の個々の評価基準に頼っていて、それを総合的に見ていくという部分だけにしか「柏版CASBEE案」のらしさは出ていないという印象です。
つまり個々の評価基準の中に、「柏版CASBEE案」の目指すところと異なる物があったとしたなら(この場合はバリアフリーがそうなのですが)、まったく逆の(この場合は、評価に従ったらクオリティが低下する)家が作られてしまうことになるのです。
これがもし、「柏版CASBEE案」にそった住宅には助成金が出ますよ、みたいになったら、住みにくい家がどんどんできてきてしまうのではないか。さらにはそうした家の構造が、実につまらない家族関係を生み出していくことにはなってしまわないか・・・。そんな危惧を感じました。

願わくば、個々の評価基準を採用する際に、それが「柏版CASBEE案」のベクトルに合っているかどうかをちゃんと判断してくれることを望みます。高齢者や障害者などにとってクオリティの高い環境を求めるなら、既存のバリアフリーがそれに適合している基準かどうかの審査をするべきです。そしてそれが不適当であるなら、独自の評価基準を作る必要があるでしょう
また、そうしていても、人間の有り様はさまざまです。ですから、「柏版CASBEE案」の評価基準を超えた優れた建築に気がつき、それを認めるシステムを、「柏版CASBEE案」自体に持ってほしいと思います。それがないまま行政が補助金などをつけたら、それは最悪です。
そしてそして、個々の建築家に、本当に一人ひとりが暮らしやすい家のあり方を知る力をつけてほしいと思います。研究発表の中で丹羽さんは通風口を残しましたが、すべての建築家がそうできるとは限りません。
バリアフリーは障害者や高齢者にとっての万能薬だと信じ込んでいたり、あるいは疑問を持つというセンスを失っていたりすると、当たり前のようにバリアフリーの家を建てて、「自分はなんて優しい建築家なんだろう」と悦に入る・・・。その家に住んだ障害者やお年寄りは、フラットで安全なだけの部屋で、置き去りにされながら、安全だけの日々を過ごしている・・・。そんなことにならないように、障害者や高齢者の住宅を考えるときにも、設計する人には、人間にとって、そしてその人にとっての豊かな暮らしという視点を決して忘れないでほしいと思います。そしてその人が障害者や高齢者であっても、このことに気がつけるだけの能力を備えていてほしいと思います

ちょうど「一緒に暮らそうの家」が出来上がりつつあったので、とても勉強になるフォーラムでした。

あっ、そうそう丹羽さんのホームページは下記の通りです。
http://www.nl-d.jp/
フォーラムの記事はブログの方にでています。
http://nldesign.exblog.jp/9521983/

posted by 五十嵐正人 at 11:28| Comment(6) | TrackBack(0) | 周辺(関わりのあるあれこれです) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お忙しいところ、お越しいただきありがとうございました。

今回、会議に参加していて面白かったのは、古里さんにしても丹羽さんにしても、しっかりとエクスキューズしながら取り組まれていたところです。
 CASBEEの思想を受け止めながらも、その限界を知るためにそれぞれの方が参画されたと感じました。

ぼくが取り上げたもうひとつの家は、母と娘の二人暮らしを想定しています。しかも、母は高齢者です。家族構成が拡大しないだろう人々の暮らしが、CASBEEの俎板の上でどのように評価されるのか?が興味の的でした。

実感としては、、、、今度、会ったときに話します。長くなりそうなので。
Posted by 佐藤K(KAZZ Satoh) at 2009年04月01日 12:09
母と娘の二人暮らしの家って、気になります。同性の親子の距離感・・・。
どんな家になるのだろう・・・。

今度、詳しく教えてください。

CASBEEの思想と、その限界・・・。建築は図面や模型という形で、新しい思想の限界をチェックできることが(すべてでないにしても)、ちょっと羨ましいですね。
福祉の世界は、やってみるまで分からない状態で公的な制度が始まり、一度はじまってしまうと、もう止めることができないという、恐ろしい現実です。現在は、障害者自立支援法という壮大な失敗を、失敗と知りつつやめられずに続けている日本です。
Posted by 五十嵐正人 at 2009年04月06日 15:13
色々、難しい問題があるんですね…
勉強になります…
Posted by たかびごん at 2009年04月11日 00:10
たかびごん様

こっちのブログも、いろいろ書きたい記事があるのですが、なかなか時間がとれずにいます。
近々新しい記事を書く予定ですが、やっぱり「難しい問題」っぽい内容になりそうな予感が・・・。
どうぞ、お付き合いください。
Posted by 五十嵐正人 at 2009年04月13日 00:21
CASBEEは、2年毎に評価内容を改訂するそうです。このようなシステムを内包する「制度」が増えるといいのに、と思います。

建築は物体になりますので、技術的な評価や制度は改訂しやすいのだろうと思います。その分かりやすい例が「構造」です。大地震がくれば、過大強化されます。
 姉歯事件は、制度のあり方を問われましたので、あれが示す「構造」は二重の意味がありました。
Posted by 佐藤K(KAZZ Satoh) at 2009年04月19日 18:10
佐藤K(KAZZ Satoh)様
ずっと、返信できず申し訳ありませんでした。ようやく引っ越し作業も前半戦が終了しました。
こっちのブログの更新もはじめられそうです。
「構造」の過大強化。物体だけに深刻な問題がありますね。
福祉の方でも、何か事故や事件があるとやはり過大強化がされます。しかし物体ではないので現場処理で小規模強化で済んでしまうこともあって、なんとか人間的な暮らしが守られる場合も多いのです。
もっともこれは諸刃の剣でありまして・・・。
引っ越し荷物のスクラップに、むかしの厚生省の不祥事、岡光事件の記事がありました。懐かしく読んだのですが、相変わらずその後も収賄などの不祥事が発覚した厚労省。岡光事件の時にはきっとシステムに過大強化がされたのでしょうが、すぐにないがしろに。
ある意味、とても人間的ともいえるのですが・・・。
Posted by 五十嵐正人 at 2009年04月26日 11:27
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